• うつろいの時をまとう
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Introduction

風景に心をよせる。
言葉を見つける。
そして、服が生まれる。
見慣れた世界が変わっていく──
服飾デザイナーの創作の記録。

日本の美意識をコンセプトに独自のスタイルを発信し続けている服飾ブランド matohu まとふ 。本作は、デザイナー堀畑裕之と関口真希子の視点や哲学を通して、日常の中に潜む美や豊かさを再発見していくドキュメンタリー。コンクリートの壁のしみ、日が昇る前の早朝に空を見上げた時に見える無数の色のグラデーション、冬枯れの中、ビルの壁や歩道橋の階段に吹き寄せられた色とりどりの落葉たち……matohuは、日常の身近な風景や物に目を向け、そこから得たインスピレーションを“ことば”に変えて服に昇華していく。たった一つの“ことば”を経て、形となって現れた服は、着る者たちの想像力をかきたてる。二人の創作から見えてくるのは、日本人が長い歴史の中で育んできた“ものの見方”であり、普段は見過ごしてしまいがちな美を見つける視点だ。

matohuには「纏う」という意味と、「待とう」という意味が込められている。服を纏うということに対する根源的な問いと、消費のスピードの早い時代に対して時間の熟成を待ちましょうという提案でもある。日本全国に点在する機屋や工房に注目し、資本主義原理の中で維持していくのが困難な職人の手仕事や伝統技術からテキスタイルを作り、真の意味での持続可能性を目指す彼らのものづくりを5年の歳月をかけて丹念に追った。

監督は、『躍る旅人─能楽師・津村禮次郎の肖像』など、伝統芸能をテーマにコミュニケーションと身体のありようを描き続けてきた三宅流。大量消費、情報過多の時代に、本当に大切なことは何かを問い、気鋭の服飾デザイナーのクリエーションを通して、日常の身近な気づきに出会う旅へ──。驚きと発見に満ちたアートドキュメンタリーが誕生した。

story

2020年1月。東京・青山のスパイラルホールで、服飾ブランドmatohuの8年間のコレクションをまとめた展覧会『日本の眼』が開催された。matohuは“日本の眼”というタイトルのもと、「かさね」「ふきよせ」「なごり」など日本古来の洗練された美意識を表す言葉をテーマに2010年から2018年までの各シーズン、全17章のコレクションを発表してきた。デザイナーの堀畑裕之は大学でドイツ哲学を、関口真希子は法律を学んでいたが手仕事や服作りへの思いからファッションの世界に飛び込む。堀畑はコム デ ギャルソン、関口はヨウジヤマモトでパタンナーとしてキャリアを積む。そして2005年にブランド「matohu」を立ち上げ、彼らは“長着”という独自のアイテムを考案した。着物の着心地や着方の自由さから着想を得ながら、今の生活に合わせた形で作り出されたモダンなデザインの服である。

2018年、matohuは『日本の眼』最後のテーマとなる「なごり」コレクションの制作に取りかかり、伝統的な技術を持つ機屋や工房と協業しつつ、テキスタイルを作り上げていく。堀畑と関口はアトリエで激しい議論を繰り返しながら妥協することなくデザインを完成させ、そしてファッションショーの日を迎える。

堀畑裕之(右)/関口真希子(左)
photo: Martin Holtkamp

matohu profile

  • 堀畑裕之 Hiroyuki Horihata
  • 関口真希子 Makiko Sekiguchi

堀畑は大学で哲学を、関口は法律を学んだ後、文化服装学院で出会う。
企業のパタンナーとしてパリコレクションに携わった後、ともに渡英。
ロンドンコレクションに携わる。帰国後、2005年matohuを設立。
パターンを大切にする「服作り」と、綿密に組み立てられた「言葉」を大切にし、オリジナルテキスタイルを用いた芯のぶれないクリエーションを続けている。

2005年
matohu ブランドスタート。
2006年
JFWに参加。以後東京コレクションで発表。
2009年
毎日ファッション大賞新人賞・資生堂奨励賞を受賞。
2011年
「matohu慶長の美」展 スパイラルガーデン その後 熊本市現代美術館。
「杉本博司氏 アートの起源」展にてコラボレーションショー開催
丸亀市猪熊弦一郎美術館。
2012年
「matohu 日本の眼ー日常にひそむ美を見つける」展
金沢21世紀美術館デザインギャラリー。
2013年
インターナショナル・ウールマーク賞 日本代表に選出。
2017年
「matohu慶長の美」展 静岡市CCC。
2019年
堀畑裕之著『言葉の服 おしゃれと気づきの哲学』(トランスビュー)出版。
2020年
「matohu 日本の眼」展 スパイラルガーデン。

cast profile

  • 赤木 明登

    赤木 明登 Akito Akagi

    塗師。1962年岡山県生まれ。中央大学文学部哲学科卒業。編集者を経て、1988年に輪島へ。輪島塗の下地職人・岡本進のもとで修業、1994年独立。以後、輪島で塗師として和紙を使った漆器作りを始める。その後は国内外で個展を中心に活動を広げ、現代の暮らしに息づく生活漆器「ぬりもの」の世界を切り拓く。著作などを通じて、日常的に漆器を使うことを積極的に提案している。著書に『美しいもの』『美しいこと』『名前のない道』など。
  • 津村 禮次郎

    津村 禮次郎 Reijiro Tsumura

    能楽師。観世流緑泉会代表。重要無形文化財(能楽総合)保持者。1942年福岡県生まれ。大学在学中に女流能楽師のパイオニアである津村紀三子に師事。その後、先代観世喜之に指導を受け、1974年に緑泉会の代表会主となる。古典能の公演のほか新作能、創作的活動も多数。近年では海外での指導交流や制作公演も行う。佐渡での活動と小金井薪能は40年以上にも亘って現在まで続いている。著書に「能がわかる100のキーワード」(小学館)など。
  • 大高 翔

    大高 翔 Sho Otaka

    俳人。藍(あい)花(ばな)俳句会副主宰。1977年徳島県生まれ。13歳より作句。 句作のほかエッセイ執筆、校歌作詞などを中心に活動。ライフワークとして、こどもたちや初心者への俳句指導に取り組む。2010年から海外でもワークショップを開催、日本文化の魅力を伝える。2010年度徳島県阿波文化創造賞、2021年度とくしま芸術文化奨励賞を受賞。著書に『ゼロから始める俳句入門』(KADOKAWAメディアファクトリー/監修)など。2022年に渡米。

director profile

三宅流
Nagaru Miyake

三宅流

1974年生まれ。多摩美術大学卒業。在学中より身体性を追求した実験映画を制作、国内外の映画祭に参加。2005年からドキュメンタリー映画制作を開始。伝統芸能とそれが息づくコミュニティ、ダンスなどの身体表現におけるコミュニケーションと身体性について独自の視点で描き続けている。

1998年
『蝕旋律』イモラ国際短編映画祭招待作品
2003年
『白日』モントリオール国際映画祭招待作品
2006年
『面打』ゆふいん記録・文化映画祭松川賞(2009年劇場公開)
2007年
『朱鷺島−創作能「トキ」の誕生』(2010年劇場公開)
2008年
『究竟の地−岩崎鬼剣舞の一年』山形国際ドキュメンタリー映画祭招待作品(2012年劇場公開)
2015年
『躍る旅人−能楽師・津村禮次郎の肖像』毎日映画コンクールノミネート作品(2015年劇場公開)
2018年
『がんになる前に知っておくこと』(2019年劇場公開)
究竟フィルム(三宅流公式サイト)
https://www.kukkyofilms.com

staff profile

  • 加藤孝信
    Takanobu Kato
    (撮影)

    1989年より小川プロダクションに参加。撮影担当作品は『無人地帯』(2011年、藤原敏史監督)、『沖縄 うりずんの雨』(2015年、ジャン・ユンカーマン監督)、『三里塚のイカロス』(2017年)、『きみが死んだあとで』(2021年、ともに代島治彦監督)、『スープとイデオロギー』(2021年、ヤン ヨンヒ監督)など。
  • 高木 創
    Hazime Takagi
    (整音・音響効果)

    録音・整音技師 音響デザイン会社(有)デジタルサーカス所属。ジャンルを問わない音響デザイン全般に従事する。アニメーション『攻殻機動隊SAC_2045』『ゲド戦記』『劇場版機動戦士Zガンダム』、テレビドラマ『拾われた男』『岸辺露伴は動かない』、ドキュメンタリー『The Dancing Homeless』『掘る女』『鳥の道を越えて』、映像作家山城知佳子の諸作品美術館展示など。
  • 渋谷 牧人
    Makito Shibuya
    (音楽)

    クラシック音楽をベースとした心地よく優しいサウンドを得意とし、伝統楽器、演劇・舞台音楽への作品提供も行っている。特に2019年小金井薪能初演の創作舞踊「雨にもまけず」の音楽は好評を博した。オリジナルの活動としてこれまでCDアルバム3枚をリリース。近年は台湾での人気も高まるなど、国外においても多方面に活躍している。
  • 藤田 功一
    Koichi Fujita
    (プロデューサー)

    大学卒業後、映画やミュージックビデオなどの現場に制作部として参加。2011年よりグループ現代を拠点にTVやVPのプロデューサーを務める。現在も特集番組やドキュメンタリー映画を中心に、ジャンルにとらわれない活動を続ける。主なプロデュース作品:NHK BS1スペシャル『月へ、夢を~人類初の月面探査レースに挑む〜』、映画『SHIDAMYOJIN』など。

comment

(五十音順 敬称略)
  • 地球上に存在するあらゆる文化はお互いに影響を与え合い混じり合い、それぞれに進化を遂げながら繋がりあっている。matohuの二人が語る言葉からは日本の文化や伝統に対する敬意と愛情がそこはかとなく感じられるのだが、そこから図らずも見えてくるのは「日本の文化は日本人にしか理解できないし日本人でなければ享受できない」などという了見の狭いものではないのだということ。そんなことこそをこの映画は教えてくれる。

    伊島薫
    (写真家)

  • 伝統と革新の関係は?日本の心とは?
    日本人だけが特別な存在であるのか?
    自らのルーツを探る時いつの時代のどのタイミングまで遡るべきなのか?
    日本人は何を信じてきたのか?
    そして何を疑ってきたのか?
    様々な問いを投げかけてくる衝撃の問題作 ^^

    上野雄次
    (花道家/アーティスト)

  • 日常には、拾い上げないと通り過ぎてしまう小さき美が溢れている。
    その一瞬を愛おしむ心が日本にはあり、彼らの服が静かにそれを物語る。
    日常の美が、祈りにも似た感謝を教えてくれる気がした。

    木村多江
    (俳優)

  • 「matohu」がやろうとしていることは、日常や美への、生きることそのものへの、静かで弛みない革新なのだということに触れ、共に歩むような映画だった。

    小林エリカ
    (作家・マンガ家)

  • 人の出会いは生きている人間だけとは限らない。
    オーストリアの詩人リルケとの縁でmatohuのお二人と知り合い、語り合い、そして私の確信は深まった。
    人は単に衣服をまとうのではない。
    衣服に込められた魂をまとうのであると。

    志村洋子
    (染織家・随筆家)

  • 手と心が生む美しいものを創る人たちの日々、体温を感じさせるドキュメンタリーです。

    谷川俊太郎
    (建築家・起業家)

  • 過去と現在、作為と無作為、マクロとミクロ、アンチとシンパシー、それぞれ対極にあるものは繋がっていることを再認識させて貰えた。
    ぼくたちも古いは新しいと語り続けてきたけれど、それをまさに絶え間なく考え続け、手を動かし形にしていることでmatohuという世界が設計されていることに感動した。

    谷尻誠
    (建築家・起業家)

  • 「伝統とは、‛革新の連続’の結果である」という宮本英治氏の言葉。
    ‛革新の連続’を継続し未来へつなぐmatohuは、しなやかな手作業で現代を歴史に織り込み、伝統を紡いでゆく。
    身に着けた人が伝統を肌で感じることができる形に落とし込み、更に現代に新しい提案を投げかける。
    今ここにある体に馴染むmatohuの服は、私たちが進むこの先の道をも示してくれる。

    束芋
    (現代美術家)

  • 泣くような映画ではないはずなのに、最後に涙が・・・・・・。マトウの二人の服は、着物の進化。そう見ています。着物を普通に着ていた時代の、今のようなハイテクがない日々の中での日常の、本当に些細な感動、感覚で、新しい表現をしている。だから、マトウの服を見ていると、これはなんだろうと思う時がある。この映画では、その洋服でも和服でもなく見える答えのようなものが見えました。失ってはもったいない。微細な事に気がつけて、涙が出てきたのでしょうか。何度も見て、思い出して、明日の何かに生かしたい思いになれました。

    ナガオカケンメイ
    (D&DEPARTMENTディレクター)

  • 思想ある本物の料理の味わいは、人の心を豊かにする気がします。
    matohuは私たちの心を豊かにしてくれるだけでなく、美の発見を通じ、未来のために必要な「気づき」を伝えてくれているのだと思います。

    生江史伸
    (シェフ/レフェルヴェソンス)

  • 言葉には魂が宿る。美しい心は、無限に拡がる糸を束ね、複雑な色彩や模様を織りなして人生を共に歩む衣服を生み出す。matohuの服は、人の身体に寄り添う一葉の詩であり、思いが紡がれた命そのもの。

    廣川玉枝
    (デザイナー)

  • お二人が運命的に出会われた"ふしぎ"。ひそやかに色々と、物事が絡み合っている現代で、手しごとに丁寧に向き合われている姿がスクリ一ンいっぱいに広がる。
    はりつめた心の布目がほぐされていく感覚が心地よかった。

    村治佳織
    (ギタリスト)

  • ゆっくりと呼吸しながら、心の目を見開いて一心不乱に観入った初めてのドキュメンタリー。人生とは自分の想定よりもずっと短いかもしれない。しかし、そのうつろいゆくひとつひとつに小さな宇宙を見つけられるなら、生きているということにきっと無限大の価値を見出せる。またものづくりとは常にその探求の連続なのだということに気づかせられたそのことに胸が震えた。

    安野ともこ
    (スタイリスト/デザイナー)

message

  • 今、ファッションについての映画を作るということ。
    普段私たちはスマホを手にし、SNSではコピー・アンド・ペーストを繰り返しては消去し、言葉やイメージをものすごい速さで消費しています。その中で、身近にあるものの美しさに気づき、長く心に留めておく感性を失ってしまっているのではないでしょうか?
    この映画はファッションをテーマとしたこれまでの作品とはちょっと違ったイメージに映るかもしれません。なぜなら、デザイナーやブランドを煌びやかでドラマチックに物語るのではなく、服に込められた深い哲学を通して、私たちがの日常の中に美を感じとる視点そのものを描いているからです。
    この映画を観たあとの帰り道、それまで見ていた足元の風景がふと違って見えてくるように。この世界をもっと豊かに生きるためのヒントが見つかるように。
    そんな体験を多くの人たちに届けたい、という思いでこのプロジェクトを始めました。

    プロデューサー
    藤田功一

  • matohuとの出会いは、前作のドキュメンタリー映画『躍る旅人-能楽師・津村禮次郎の肖像』を製作しているときでした。能楽師の津村さんが古典能を演じる時にmatohuのデザインした衣装を伝統的な能衣装と合わせて纏っていました。これには驚きました。通常古典の能では伝統的な能衣裳を組み合わせて演じられ、現代のファッションデザイナーが創った衣装を合わせて纏うということは考えられないことでした。しかもその時のmatohuの衣装が伝統的な能衣装の中にとても自然に溶け込んでいたのです。
    和をテーマに服を作るファッションブランドは珍しくないかもしれません。でも長い歴史の洗礼を経た伝統的な能衣装と遜色なく共存できるレベルで服を作るということは、表面的な和の理解や表現ではなく、和の歴史や美意識に対する非常に深い思索性がなければとても実現できません。そこにmatohuの強さと独自性を感じました。
    matohuが毎シーズンのコレクション・テーマにしている言葉は「かさね」「無地の美」「ふきよせ」… など。これらのひとつひとつの言葉から、日常への気づき、美意識や哲学を紡ぎ出し、一着の服として体現させています。ひとつの言葉、そして一着の服が長い時間の堆積や風景や美意識の広大な空間を内包している… そういう服のあり方、言葉のあり方に強く惹かれ、ファッションやモードに留まらない、新たな視点でドキュメンタリーが作れるのではないか、そんな可能性を感じながらカメラを回し始めました。堀畑裕之さん、関口真希子さんは日常の何気ないもの、例えば壁のしみや夜明け前の空の色のグラデーションなどから着想を得て、コンセプトやデザインを作り上げていきます。日々の生活の中の気づきから服が作り上げられる、デザイナーの視点や思考の動きそのものを描きたいと思いました。

    映画監督
    三宅流

  • 5年前に三宅監督がアトリエにいらして、「ドキュメンタリー映画を撮らせてほしい」とお願いされた時には、これって本当かな?と半信半疑でした。それから毎シーズン密着して仕事の現場を撮影されて、ずいぶん長いお付き合いになりました。
    服作りはいつも鬼気迫る真剣勝負の連続です。その緊迫した難しい現場に分け入り、ふだんは見られない裏側まで撮ってくださいました。さらにその美意識の根底まで、丹念に。5年間に撮影したフィルムは合計190時間 ( 8日間! )。このねばり強さには脱帽です。そしてそのほとんどを切り捨てた勇気にも。
    見ていただくとわかりますが、たんなるデザイナーのドキュメンタリー映画にはなっていません。この映画を通して、世界をより鮮やかに繊細に見る「眼」が、みなさんの日常をより豊かにすることを信じています。

    matohuデザイナー
    堀畑裕之・関口真希子

theaters

3/25(土)ロードショー
特別鑑賞券¥1500(税込)
2023年1月23日現在
地域 劇場 電話番号 公開日
東京都渋谷区 シアター・イメージフォーラム 03-5766-0114 2023年3月25日(土)~